ムーントーク 第九夜 「天使は森へ消えた」をアップしました
『天使は森へ消えた』(ヨハンナ・シニサロ 作)について語っております。
最初読んだ時は、あまりピンとこなかったんだけど
ムーントークの際に、黒澤優子とウーさんが
「コトバのキレ」が凄いと仰ってたので
その事に注意しつつ再読してみた。
全体のストーリーはフワフワしてて掴みどことがないけど、
確かに短い文節ごとに注目すると、面白いフレーズが散見された。
ペイッコっていう妖精!?(同じくフィンランドのムーミンのような)に
まつわるお話である。
(以下、本文引用)
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「本を閉じる。頭のなかで思考がキリキリ舞いする。あのペイッコは私のいったい何なのだ。
ちょうど翼がちぎれ看病されているスズメみたいなもの。あるいはエキゾチックなペット。〜〜〜
あるいは、何だろう。自分に問いかけても答えが見つからない。手を伸ばし、つぎの本をつかむ。」
「ごくまれに動けば、やわらかい水銀に等しい。すべてを覆すような求引力を感じる。
どう見ても筋力は莫大なものがあるはずだ。動作は、まるで油か絹のようだ。その眼のなかに夜の野火が棲む。」
「夜中に目が覚めた。やつはソファの背もたれに座り、私を見ている。
かすかな薄闇を背景に、夜の黒いシルエットを描いている。
自分が燃えるように苦しく身動きできないのは完全にやつのせいだとわかる。
あのまなざし、夜の獣の眼。暗闇をものともせず、油断なく鋭く私を見ている。
眼をしばたたいたり口の端をひくひくするのをすべて見られている私のほうは、
その黒い、黒い輪郭のほか何も識別できない。」
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なんとなくなんだけど、スピッツ草野マサムネ氏の世界観がやや近しい気がする。
ファンタジーなんだけど鋭利さとエロチシズムがあるというか。
読みあぐねた本も他の人からのアドバイス・視点を持ち込めば、
精読の力点が変わることで理解が深まることがあるので有効ですな。
T.HASE拝。