なぜ小室哲哉はメガヒットを連発したのか 後編:歌詞編

      2020/07/22

以前、掲載した『なぜ小室哲哉はメガヒットを連発したのか』

後編は【歌詞】にフォーカスしてお送りします。

小室哲哉(以後、TK)が全面プロデュースを始めた

trfあたりから歌詞を手がけることが多くなる。

時期を同じくしていることからも伺えるように

メガヒットと歌詞の関連性も非常に高いと思われる。

その特徴をいくつかの項目で取りまとめてみた。

 

 

1.映像的な世界観の演出


LOVE AGAIN

フェンス越しに のぞいた

砂埃の奥には

ゆれてる みんなの中

フォーカス自然とあってく

初恋だったね 今思えば

廊下を走って 帰り道急いだ


LOVE AGAINの2番Aメロのラインが非常に好きなのだが、

歌詞を見ながら歌を聴いてみてほしい。

メロディと歌詞が渾然一体になって

頭の中に画のイメージが飛び込んでくる。

一聴すると複雑なメロディだが、詞との

マッチングが良いのか鼻歌で自然となぞりやすい。

また、このAメロのフレーズは1番と2番とで

メロディラインが違うのだが、こういった自由さも

自身が歌詞を手がけている影響が大きいと思われる。

 

 

2.韻を踏んでメロディを際立たせる

言葉の響きだったり、助詞を揃えることで

リズムを出すテクニックを多用している。


【Wanderin’Destiny】

あなたを 信じたら

あなたと 死ねたら

あなたと 静かな

~~~~~~

I’ll be w/z you all my life

You’ll be w/z me all your life

会わずにいられない


”あなた~”を3回続けて

”信じたら/死ねたら/静かな” と

畳み掛けるように韻を踏む。

そして、”あなた~”の歌詞に対して

出だしの母音が”あ”から始まり、且つ

前出の”あなた”に対して  ”I(私)”から始まる、

I’ll be w/z you all my life~ を次のフレーズに持ってくる。

更に、”アィルビーウィズユー オールマイライフ” の響きに揃えて

”会わずにいられない~”

(”ア”ィルとウィズユーの”ズー”の音が重なる)と駄目押しする。

これでもか、と言わんばかりのライム連発である。


たまにはこうして 肩を並べて 飲んで


「wow war tonight」 の印象的な出だしだが

このフレーズも語尾に”て”を3回続けて

言葉でリズム感をつくる事に一役買っている。

 

 

3.作詞家とシンガーソングライターのハイブリッドである

個人的な見解なのだが、TKの歌詞は

職業作詞家とシンガーソングライターの

中間に位置している印象がある。

先に述べた 映像的な世界観 や 韻の踏み方 は

職業作詞家的なテクニックである。

その一方で非常に内省的な心情を吐露した唄もあり、

それはシンガーソングライター的なアプローチである。

特にglobeの中期以降はメランコリックな表情を持つ曲が多い。


憂鬱さを誰にも見せずに歩いてる~


と歌った「Perfume of love」なんかはすごく好きなナンバーのひとつである。

爆発的に売れた「wow war tonight」も

みんなで歌って楽しい合唱ソングでありながら

非常にパーソナルな思いを書き綴った

歌詞であるところに妙味がある。

 

 

そもそも、TKご本人のトークやTwitterなど読んでいても

余白を含んだ断片的な描写が多く

吐く言葉そのものが歌詞的であり、

生き方そのものが音楽なのである。

T.HASE拝。

 - コラム_T.HASE, 俺の作詞道, 音楽