トウモコロシ 作品解説 の一部です!

      2016/08/07

PIrates Booksにて書籍第1弾『トウモコロシ』発売中です!

作品解説を一部ご紹介します↓

「イチゴ狩り」
思春期の女の怖さが遺憾なく描写されつくされている。
学校を舞台に繰り広げられるイジメ・妬み・そねみ・反感・羨望・性的遊戯の群像劇。
登場人物は全員女子学生で、彼女たちの語りのみで構成されている。
複雑に入り組んだ関係性読解のカギは何の理由もなく悪を行うウサオの言動である。

「滴」
この世界の外部にいるかのような一人の少年の目によって、
因襲というものの愚かしさが抉り出される。少年はなんらかの病気で
動くことも喋ることもできないが、病院のベッドに横たわったまま
透徹した目で世界を見ている。少年は静かで礼儀正しい革命家だ。日常は淡々と進む。

「豚」
対照的な三人の女の語りを軸に物語が展開する。
ひとりは外部からやって来た美しい寡婦、
ひとりは家庭的だが永らく結婚に縁のなかった中年女性、
ひとりは裕福な家庭を切り盛りする奥さんとされている。
しかし裕福な家庭は妄想かもしれないし、
寡婦も中年女性もいつまでも家庭に無縁ではいない。
雨の日には何かが起こる。構成は神話的なまでに幾何学的である。

「Jam」
若い女性のセックスと妊娠に関する一人称告白体という
世にありふれた設定もこの短編集の中にあっては異質な輝きを放つ。
海辺での女の遍歴は男に妊娠を伝えて当惑されたことへの
失望を象徴的に表現している。色彩と匂いの氾濫、
夜と昼の強烈なコントラストが織りなす散文詩のような一篇。

「サファリ」
悪夢のような趣の、切れ味鋭いショートショート。
愛想笑いや作り笑いは人間関係の潤滑油ではなく、
もがいても抵抗のない真空のような自己欺瞞で
われわれの精神をむしばむ。

(kanagawa拝。)

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