俺の作詞道 ~其の八『川の流れのように』秋元康~
秋元康さんの詞についてはイチローと同様で
膨大なヒットの本数(と売上)があるので
評価の枠組に収まらない高みに達しています。
秋元さんの作詞で一番好きなのは
中島美嘉の「will」です。
美空ひばりさんの「川の流れのように」ですが、
サビの一番印象的なアタマの部分の歌詞が
「あぁ~」なのが当初少し疑問でした。
音の跳躍が大きく目立たせたい箇所なので
通常は印象的な歌詞を持ってくるところです。
同じようにサビ冒頭で2つの音の跳躍幅が広い
レミオロメンの「粉雪」は
「こなぁ~ゆきぃ〜」
かなりいびつな言葉を持ってくることで
印象的なフレーズにすることに成功しています。
秋元さんはみんなで歌える唱歌のような曲を
作りたかったのではないかと推測してみました。
「あ」平仮名で一番分かりやすい・歌いやすい言葉をもってきて
誰もが思わず口ずさんでみたくなる
フレーズにしたかったのではないか、と。
その後の歌詞も、母音は”あ”が続きます。
”あ”は喉が開いて音が広がるので、言葉がよく響きます。
そして「ゆるやかにぃ〜」
ここのメロディと言葉のマッチングが抜群です。
微妙なピッチ(音程)のゆらぎが
川面のせせらぎを上手く表現しているように聴こえます。
同様に2番の「おだやかに〜」も絶妙です。
「川」をモチーフとした
AKB48の「RIVER」をアンサーソングと捉えると
面白い構図が浮かび上がってきます。
「川の流れのように」では「川」が
身をまかせるものであるのに対して(Let it beの精神)、
「RIVER」では「川」が人生の試練を象徴しており
困難に立ち向かっていく主人公の姿が描かれています。
人生に対する捉え方の移り変わりが
2つの曲で面白い対比となっていますね。
T.HASE拝。