俺の作詞道 ~其の九『Addicted To You』宇多田ヒカル~ サラブレッドが産んた洋楽×邦楽のハイブリッドシンガー
2016/10/13
宇多田ヒカルは
洋楽的なアプローチの楽曲
(メロディ・リズム・コード進行)に
邦楽ど真ん中の歌詞が乗っている
スタイルが特長です。
特に初期はその色合いが濃いので
『Addicted To You』を取り上げてみました。
《曲》
■裏拍(シンコペーション)を多用している
■リズムがハネている
《詞》
■口語体・身近な言葉を使っている
(しなきゃいけない・電話代・お互いの事情 etc.)
■A・B・Cメロ〈会えなくてもよい〉という流れに対し
『だけどそれじゃ』の接続詞で劇的に転換を図る。
心境の複雑さをサビ〈苦しくて〉入りから強く表現している。
■非対称の言葉を間近に置くことで揺れる思いを表現する
今おとなになりたくて⇔いきなりなれなくて
キスより抱きしめて⇔いきなりやめないで
■1つの音に言葉がハマりきっていなくてもメロディとして聴かせる
日本語は1つの音に対して1つの言葉しか乗せられないという制約があります。
例えば英語詞は”Just”と1単語をそのまま1音に乗せる事が可能ですが、
日本語詞だと”じ”しか1音に入りません。
ところが、宇多田ヒカルの曲だとメロディ重視で、
1音に2つ言葉を入れた音符を
流れの中で聴かせてしまうというテクニックを用いています。
このメロディ、鼻歌で歌うと相当上手く歌わないと
全然しっくりきません。片言の日本語のようになってしまいます。
宇多田ヒカルの曲は先に述べたように
シンコペーションが多く且つリズムが跳ねている為
カラオケだと歌いづらい楽曲が多いです。
ご本人は自然に歌っているように聞こえますが
リズム感に長けて無いと、たどたどしくなってしまいます。
言葉・音符の位置が譜面で書き起こすのが
難しい箇所にあることが要因です。
R&Bのようなつくりの楽曲・トラックに
日常感のある歌詞が乗っているギャップ、
洋楽と邦楽を自由に横断しているのが
宇多田ヒカルの面白さですね。
デビュー当時は久保田利伸のような女性シンガーだなぁと
感じた記憶があります。
あと、これは想像ですが
”addicted”という言葉の持つ強さと
響きの面白さをキッカケに楽曲作りしたのでは
ないかと思いました。
T.HASE拝。