逆転の発想で作者と読者の心を摑む漫画アプリ「読破!」に感心した。(と思ったが。)

      2016/08/07

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「読破!」は全話無料のAndroid漫画アプリだ。ラインナップは現在のところ〈懐かしの漫画〉に分類されるようなものが多い。その中から恣意的に一作品をダウンロードしてきて読み始めると、すぐにこのアプリの優れた発想に感心してしまった。

まず、広告が頻繁に出る。ものすごく出る。これだけ出れば広告収入も上がるだろう。次に全巻まったくの無料ということでユーザーは泣いて喜びこそすれ、広告の多さに文句を言う者はいない。最後に、これが一番重要なことだが、このアプリ内ではページ指定などができず、いったん読み始めたら1ページずつ読み進めていって最後まで読む以外のユーザーインターフェイスがない。読み終わったら次巻に進むしかない。これは不便このうえないように見えるが、作品を提供する作家にとっては、最初から最後までちゃんと読んでくれる読者を獲得できるという嬉しいことなのだ。VHSの早送りのように目当てのシーンだけ拾い読みするのではなく。

 

作者はこのためにこそ古い自作を提供したのかもしれないし、完全無料という旗印が読者に全ての事態を許容させている。すばらしい、誰も損しない。

 

おそらく自作の部分的な描写のみを取りあげられて誤解されることに苦々しい思いを味わったことのない作家は稀なのではないか。電子書籍は紙の本と違って検索性の高さや頭出しの速さなどの便宜において優れている。しかし逆に拘束し、制限をかけることへの高い適性も、アイディア次第では有効な訴求になりうるという示唆がここにある。

 

(ここまで書いて「読破!」の最新バージョンを確認した。それは「漫画読破」と改名され、ユーザーの意見を取り入れたバージョンアップによって使いやすくなり、普通に好きなページが読める普通のアプリになっていた。みやすのんき先生の名作もなくなっているようだ。改悪だ……。)

kanagawa 拝

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