昨今のクラウドファンディングに対する素朴な疑問

      2016/08/07

ベルハー映画は見事完成してバウスシアターの有終の美を飾ったし、
いずこねこのプロジェクトは1日で目標額を達成した後も
順調に伸び続けていまや300万円に届きそうになっている。
思い返せばBiSの生アフレコ資金調達方法もそうだった。

最近のアイドル界はクラウドファンディングが熱い。

しかしちょっと待てよ。

これは誤解されやすい名前ではなかろうか。
ファンド=投資信託という頭があると、
コンテンツビジネスに出資してリターンを得るつもりになってしまいかねない。
しかし先に挙げた例のいずれも、そういうものではなく、
一口いくらの金額を払ってグッズや試写会鑑賞権などをもらうだけなので、
いわば寄付であって、いかなる意味でも金融商品を買っているのではない。
元本割れしようが回収率200%になろうがリスクもなければ配当もない。

コンテンツ産業のもつ“ゼロからものを創る”という性格は
リターンを極大化する無限の可能性をはらんでいる。
一方、ファイナンスの理論はリスクを極小化する。
両者を組み合わせることによって新しいビジネスが幕を開ける

———2007年10月に出版された
『「フラガール」を支えた映画ファンドのスゴい仕組み』(角川SSC新書)において、
著者の岩崎明彦氏が描き出したコンテンツファンドの可能性は今でも古びていない。
すでにこの著書において「アイドルファンド」という言葉も登場する。

しかし保守的なこの世の中はリスクを取って変革に邁進する
常識外れで突飛な企業の存在を許さなかったものか、
岩崎氏の所属するジャパン・デジタル・コンテンツ信託株式会社(当時)は
数々の法令違反行為等により行政処分を受け、2009年、金融庁により信託免許を取り消された。
続いて『フラガール』の配給会社であるシネカノンも資金繰りに行き詰まり、
2010年に民事再生法の適用を申請。
結果的に岩崎氏の著書の内容までも疑いの目で見られるようになったのは残念だ。
これらの失敗は「クラウドファンディング」という新しめの看板だけ掲げて、
実は小規模な寄付を募るだけのプラットフォームが
安全パイだという教訓を残したのだろうか。

kanagawa拝

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