『複眼の映像 私と黒澤明(橋本 忍 著)』を読んで、映画脚本の肝を知る
2017/06/21
黒澤明監督の作品に名を連ねている
脚本家・橋本忍氏の著作を読了。
脚本の共同作業をどうやって行っていたのか気になって読んでみました。
端的に述べると、
『同じシーンを複数人で書いて、一番良かったものを採用する』という
やり方を黒澤組では行っていたようです。
常に書き手の間で競争原理が働く訳で、非常に理に適った手法です。
ハリウッドのコーライティングなども同様のやり方を採用しているのでしょうか!?
素人考えでは ◎登場人物ごとに書き手を変える ◎時系列で分ける(前・後半)
のではないかと、朧げながらに思っておりました。
テーマを絞れ、ストーリーは形のある短いものにしろ、人物は彫れるだけ彫れ(著作より引用)
橋本氏の師匠にあたる伊丹万作氏の言葉が引用されておりますが
正に映画脚本における金科玉条です。
そして、黒澤監督はノートにビッシリと
登場人物を彫りに彫った設定を
書き込まれていたようです。時に絵も交えながら。
やはり、キャラクターの造形が大事なんだよなぁ。
『羅生門』の時の天性の閃きも、『生きる』の時の合理主義を越える完全主義も
それらはいずれも、この手抜きしてはいけないものには手を抜かず
あらゆる努力の積み重ねを徹底して惜しまぬ(著作より引用)
映画で目に触れるのは一部分であり、
ノートに書かれた膨大な情報が直接・間接的に
映画の品格を下支えしているということでしょう。
あと、シナリオを書く作業をマラソン競技に
例えている述懐があるのですが、
あらゆる仕事・プロジェクト推進に通じる部分があります。
爆発力に頼る短距離走ではなく、
休むこと無くただひたすらに走り続けていく長距離走。
先は長いので粛々とペースを崩さないことが
肝要だと心得ました。
T.HASE拝。