絶版マンガ図書館で『実戦!パソコン通信』を読み、新しいものが生まれる際に特有の凄まじい熱気にあてられる。

      2016/08/07

先日リニューアルしてネット上でも注目を集めた絶版マンガ図書館(旧・Jコミ)の所蔵作品数が物凄い勢いで増えている。

このサイト、ひとくちにいって違法ファイルの有効利用な面がある。一般のユーザーが勝手にそのへんの絶版漫画をスキャンしてアップロードすることが、そのまま、館への所蔵依頼になる。

権利者への連絡も、ライセンス問題のクリアも、全てやってくれた上で、広告を付して無料公開される。

「最新アップロード作品」のページにはサンプルのみがズラリと並び、そのあまりの多さに権利者の許諾が追いついていないことを思わせる。

しかし正規の公開作品数もアクセスするたびに増えている。早くもネットワーク回線の太さが心配になってきた。

さて、すがやみつる作・画『実戦!パソコン通信』は1985年から86年のあいだに雑誌連載されたエッセイが元になっている。

漫画ページは少ない。ほとんど挿絵程度にすぎない。しかし作者が著名な漫画家なので(『ゲームセンターあらし』が一番有名か?)この図書館に所蔵されていてもさほど違和感はないだろう。

ここに書かれているのはインターネット以前のパソコン通信の世界の黎明期だ。かさむ電話代におびえつつ、カタコトの英語でキーボードを叩いて夜な夜な海の向こうの顔も知らない仲間と会話する、たったそれだけのことがいかに心躍る体験だったことか!

その時代を知らなくても、作者の筆は当時の興奮をありありと描き出しているので、まるで自分が体験したかのように楽しめる。この30年で半導体の集積密度は100万倍になり、ブロードバンドは普及し、重い動画データも世界中へ楽々と送信できるようになった。夢のような世の中になった。そしてかつてのパソコン通信の秘密結社的な興奮は今や地球上のどこにもない。

この類例のない文献はタイムカプセルの中から突然あらわれた。

kanagawa拝

 - コラム_kanagawa