出版への道3  〜黒澤優子の決意〜

   

印象的な出来事の一つに、おばあちゃんの床ずれというものがあります。

 

惚けて、這ってまわって、愛を求めて。

寝たきりになって、背中一面赤く腫れて、床ずれになって。

それでもつらいとか、痛いとか、ひとつも泣き言を言わない。

そこに女の意地みたいなのを感じて、なんだかすごかった。

 

自分を超えた極限の世界。私はお寺で生まれ育ったわけですが、

そういった究極な状態、人間模様をいろいろみせてもらった気がします。

そしてそれは、私の表現の原点なのではないかと思います。

 

トウモコロシは、私が編集者だったころ、

漫画家さんの原稿をとりに電車で揺られているときに思いついたお話です。

そこから10年以上たった2011年3月11日、その時点でおおよそ完成。

地震のさなか、福島で大きく揺れながら

「この原稿が本になるまでは、死んでも死にきれない!!!」

っと、思ったのを今でも覚えてます。

 

時を経て、金川信亮に出会いトウモコロシは磨かれ、

T.HASEによって、この世に産声をあげる運びとなりました。

 

二人に出会ったとき、こんなことになるなんてまるで想像してなかった!

 

無事完成して本になること、心から幸せに感じます。

力添えしてくださった、デザイナーさん、カメラマンさん、

今まで出会った人、すべてに感謝を込めて。

生きててよかった!

 

 

黒澤優子 拝

 - コラム_T.HASE, 本・マンガ