クリント・イーストウッド監督作 の映画『15時17分、パリ行き』のリアリティに唸らされる。
クリント・イーストウッド監督作
『15時17分、パリ行き』を鑑賞しました。
”主演の3人は、実際にタリス銃乱射事件に巻き込まれた3人を
本人役として起用している”
核となるアイデアが秀逸です。
取材するうちに本人達を映画に登場させようという閃きが生まれた瞬間、
クリント・イーストウッド御大は映像化の成功を確信したことでしょう。
リアリティが伝わってくる表現が好きなので、存分に愉しめました。
クリント・イーストウッド監督や北野武監督などの
必要最小限のテイク数による撮影方法は
緊張感を伴うことでザラザラとした感触が残り、真に迫るものがあります。
(以下はネタバレを含みますのでご留意ください)
”テロを未然に防ぐ”という結末が
事前に分かっているだけに気になったのは
◎列車内でテロ犯と対峙する場面をどう描くか!?
◎”素人”である主人公達の演技の出来栄えは!?
という点でした。
通常の映画だと実際にテロ犯と格闘する場面は盛り上げる為に
もう少し尺は長めに取りたいところです。
ですが、現場に居合わせた人達の監修により
忠実に当時の状況が再現されており
ストップモーションを含みながらも、一瞬で片がつきます。
主人公のスペンサーがテロ犯に向かっていく際、
正に”事実は小説より奇なり”の現象が起きます。
これは現実の話だからこそ成立した顛末であり
当事者が演じることで一層の臨場感を担保しています。
主人公3人の演技について(英語に疎いので台詞回しの精度は不明)
◎アレク・スカラトス
出番がやや少なめで、ほぼ素の状態で出演
◎アンソニー・サドラー
ウィットに富んだ雰囲気で器用な印象
◎スペンサー・ストーン(主人公)
冒頭の場面は若干硬さがみえるものの、経過と共に馴染んでいく
テロ犯と遭遇する場面では果敢な姿を見事に現出させる
これは憶測なのですが、
順撮り(時間の経過通りに撮影を行う)することで
主人公のスペンサーをはじめ3人の成長物語を
フィルムへ自然な形で焼き付けたのではないでしょうか。
(※順撮りでなければ思い込みによる印象なので、恐縮です。ひとつご了承ください)
いわば”普通の人”が銀幕の中へ違和感なく馴染んでる様子に
得も言われぬ妙な気分となりました。
極力、照明による演出はシンプルにすることで
撮影の効率化とリアルな画作りに徹し、
劇伴の音楽はあえてオーソドックスなものをつけることで
分かりやすい状況説明に寄与しています。
映画館で観ることで、追体験できるような没入感が生まれました。
シアターでの鑑賞の面白さに改めて気付かされたところもあります。
クリント・イーストウッド監督は実話を元にした作品が多いですが
伝記映画である『アメリカン・スナイパー』もお薦めです。
『アメリカン〜』はラストに救いがないので、
英雄譚である『15時17分、パリ行き』を創ることで
うまくバランスを取られたのではないでしょうか。
T.HASE拝。