映画『ダイ・ハード』が面白すぎたので解説する
2020/04/07
昔に観た映画を改めて鑑賞すると、様々な発見がある。
ブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード(1988年)』
理屈抜きで愉しめるアクション映画ですが読み解きながら観ると、無数に散りばめられた仕掛けに唸らされました。
臨場感ある格闘シーンもさることながら、脚本が本当によくできている。
面白いと思った箇所をほんの一部ご紹介します。
足の裏に刺さるガラスの破片
映画は飛行機のシーンからスタート。
隣の席の人から、旅先に着いたら裸足になるおまじないを教えられる主役のジョン・マクレーン刑事。
おかげで靴を脱いだ状態での戦闘を強いられる。
最初の格闘でマシンガン・ライター・トランシーバー(すべて必須アイテムとなる)など手に入れるが、靴は小さくて足が入らない。
物語の後半に悪の親玉ハンスの機転で、ガラスの破片に満ちた床で足の裏を血だらけにしながら、窮地を脱するマクレーン。
これは実に痛々しい。観ているこちらもいやな汗が出る^^;
伏せられた写真立て
離婚調停中の妻ホリーのオフィスに飾られた家族で撮った写真立て。
マクレーンから約束の電話がなかったことに苛立ち、写真立てを怒り半分に伏せてしまう(妻ホリーのもどかしい心情がうかがえるシーン)。
ホリーの同僚(ラリってるどうしようもない奴)が親玉ハンスと交渉する際にマクレーンの妻であることをチクるのかと思っていたが、そうではなかった。
伏せてあった写真立てに気付いて、夫婦であることがバレてしまい人質にとられることになる。
・裸足で戦うマクレーン ・ホリーが伏せた写真立て それぞれ冒頭に提示された伏線をクライマックスで回収する仕掛けとなっている。
伏線は他にも無数に散りばめられている。
例えば日本人社長がパスワードを白状するか悪役達が賭けているシーンが一瞬出てくる。
(この所業で、実はテロリストではなくただの強盗殺人集団であることが暗に仄めかされている)
そして後半に出てくるトランシーバーでの会話のシーン、マクレーンを対象に警察官の間でも賭けが行われているのである。
決闘シーン、装飾用のテープを使って拳銃を背中に貼り付けたのもクリスマスに絡めたナイスアイデアである。
クリスマスに最悪のパーティーが起こる
クリスマスという1年で最も楽しい夜、凶悪な事件に巻き込まれる。
相反する要素を組み合わせることでブーストされる効果を上手く利用している。
(その他の類例)
味方であるはずの ロス市警・FBI・マスコミが、ことごとくポンコツで終始イライラさせられる。
高所恐怖症のマクレーンが、高層ビルでの騒動に巻き込まれる。
凶悪な犯罪集団だが、首謀者のハンスはフォーマルなスーツを着込んだ理知的なインテリマフィア。
極限状態においてもウィットを忘れないジョン・マクレーン
相棒となるパウエルとのトランシーバーでのやり取り、見知らぬ者同士が徐々に打ち解けていくのだが丁々発止のやり取りが小気味良い。
パトカーをマシンガンで威嚇射撃して、猛烈なバック走行で逃避させたパウエル相手に「運転の腕はいいみたいだな」と茶化すマクレーン。
ラスボス退治後にカウボーイ気取りで銃口を吹き付ける仕草などニューヨーカーはこういう感じなのかな!?と思わせるジョーク好きの陽気なキャラクター造形である。
ちなみに囚われた状態でも「ジョンは人を怒らせる天才よ」と述べたホリーもまた肝の座った奥様である。
エレベーターに潜み敵の人数・名前を把握したり、タバコの銘柄から相手がヨーロッパ系であることを見抜くなど頭脳をフル回転させて戦いに挑んだことも魅力的なポイントである。
説明的な台詞やナレーション無しで状況を自然に把握できるので没入感がある
◎リムジンの運転手から色々と詮索されて、別居中であること妻の出世をうまくサポートできていない状況が浮き彫りになる。
◎玄関口で妻の名前を入力する何気ないシーンで、マクレーンの苗字を名乗っていないことに対するジョンの釈然としない気持ちが伝わる。
◎敵キャラの金髪(弟)が作業しているところを、傍若無人にチェーンソーを持ち出す金髪(兄)。粗暴な性格が一瞥できる。また、金髪(弟)が殺されて金髪(兄)が復讐の鬼と化することでマクレーンの手強い相手となる。
敵側の描写も多いのが斬新
親玉ハンスが爆弾を探している際に、バッタリとマクレーンと遭遇してしまう。
銃口を向けられるも咄嗟の判断で一般客を装うハンス。こわばった表情から移り変わる演技が絶妙である。
悪役の方が背中を取られることで興味深いシーンとなっている。(この場面でハンスはマクレーンが裸足であることに気付いている。)
ラストシーン、ビルから落下していくハンスの面貌が印象的である。
緻密に練り上げられた構成が見事です。
自分が観たのは当時13〜14歳の頃だったが、そりゃ面白い訳だ。
コンセプトの斬新さ・脚本の良さが映画の鍵を握ることを改めて痛感したのであります。
T.HASE拝。